文部科学省 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

次世代型環境防災都市の構築に向けた基盤研究

~神奈川県厚木市をモデルケースとして~ 

研究テーマ

Project 1

自然災害リスクの極小化に向けた地域密着型防災ネットワークの構築

研究分野の概要

本研究テーマの目的は次世代型環境防災都市の構築のため,自然災害リスクの極小化に向けた防災ネットワークを構築することである。本研究テーマでは自然災害リスクを短期的災害と長期的災害の2種類に切り分けてそれぞれの防災ネットワークを融合させるように材料構造分野,環境設備分野が有機的連携を図りながら研究を進める。短期的災害としては地震,台風,竜巻,土砂災害等をターゲットとする。厚木市は内閣府より東海地震に係る地震防災対策強化地域に指定されており,また,市の全体構想でも安心・安全なまちづくりを目指すなど,本研究テーマの必要性が極めて高い。長期的災害は気候変動,大気汚染,ヒートアイランド等を対象とする。厚木市は大企業の工場が密集しており,その近隣には住宅地が広がる地域が多くみられることなど,大気汚染等の環境面の災害にも対処する必要がある。

研究内容

厚木市およびその周辺地域を対象として,地域の自然環境,生産活動等を反映させた地域密着型の自然災害に関するリスクコミュニケーション活動を,自治体,教育機関を通じて実践する。自然災害として台風・竜巻(2015年2月に厚木でも発生)などの強風と豪雨、地震を取り上げ,現象に応じた防災の手段や現象への理解を促す。具体的には,強風災害については,本学風工学研究センターを中心とする強風防災活動を展開する。同センターには,大型境界層風洞,竜巻状気流シミュレータ等の設備が整備されており,日本全国の強風災害調査資料も充実している。さらに領域気象モデルによる風況や降雨の解析技術も有している。それらの施設、調査資料、解析技術を地域への防災施策と,住民への伝達手段を工夫して自然災害に対する認識レベルを向上させることが目的である。教育機関を通じた活動としては地域の避難施設を兼ねた高等学校等と連携し,気象観測機器,地震計を高密度に配置し,地域内の高密度観測網を整備する。これらの記録は,リアルタイムに共有できるものとし,観測記録の分析等は拠点と設置先教育機関が共同で実施することにより,科学技術教育の基礎知識の流布と防災意識の積極的向上が図られる。学術的には,拠点で開発している多点振動計測技術や風荷重予測技術,台風シミュレーション技術、気象シミュレーション技術などと組合せることにより,高精度なリアルタイム自然災害被害予測システムに必要な技術を明らかにする。

(1) 自然災害観測ネットワークの開発および性能検証

(2) 被害予測システムの要素技術としての建築物健全性評価システムの構築に向けた検討

(3) 被害予測システムの要素技術としての風況予測システムの開発に向けた検討

(4) 建築設備・非構造部材の疲労損傷診断法とフェールセーフ技術の開発と自然災害発生時の事業継続計画の策定

(5) 風環境のネットワークモデルに基づいた防災予測システムの開発

(6) 防災技術向上に向けた超高強度コンクリートの利用方法の検討

Project 2

環境防災都市モデルの提案に向けた神奈川県厚木市の建築的・都市的データの収集

研究分野

 本研究テーマでは、災害に対して十全な備えをもつ環境防災都市モデルの構築のために、建築学の計画系諸分野が協働し、神奈川県厚木市に関する建築的・都市的データの収集と分析、およびその活用提案を行う。具体的には、都市の成り立ちや建築と災害・風土との関係を歴史的に調査し、都市構造の特徴、そこに立地する建築や都市インフラの防災対策上の問題点を検討する建築史・都市史分野、居住地域や都市空間の類型的特徴把握とそこでの環境・防災性能の検討、さらに防災を意識した地域コミュニティの構築を目指す建築計画・都市計画分野の成果を統合する。東京工芸大学大学院建築学・風工学専攻は、厚木市内に所在する唯一の建築学研究機関として、行政とも連携しながら上記のデータベースを構築し、次世代の環境防災都市構築に向けたモデル提案の基盤を整える。

研究内容

 厚木市は神奈川県央地域に立地する人口約22万人の首都圏の衛星都市である。鉄道駅前の中心市街地には多くの高層マンションが建ち、郊外には高度成長期に開発された住宅団地が点在するベッドタウンであると同時に、大企業の生産・研究拠点が数多く立地し、5つの大学がキャンパスを構える産業・文化都市の側面ももつ。また、山・川の豊かな自然を有する点では観光都市の趣きももっている。際立った特徴こそないが、居住、産業、文化、観光において相応の重要性をもった地域の中核都市であり、全国に存在する同規模の都市にとって一つのモデルとなる可能性をもった都市と言える。

 本研究テーマではこの神奈川県厚木市をモデルケースとして、次世代型環境防災都市モデルの提案のための建築的・都市的データの収集と分析を行う。環境防災都市とは、いつ訪れるかわからない自然・環境災害に対して平時より計画的かつ継続的に対策を進めることで、ソフト・ハードの両面で新しいネットワークを構築し、さらにそれを契機として日常的な地域コミュニティの活性化も目指すような都市の形である。その基盤形成のために本研究テーマでは、建築学の知見を動員して都市に関する総合的なデータ収集を行っていく。研究の実施に当たっては、5人の研究者が以下の内容を分担して遂行する。

⑴ 厚木の都市構造の捕捉

⑵ 風土、文化、災害史的観点から見た厚木の特性分析

⑶ 厚木の居住地類型の把握と環境・防災的課題の抽出

⑷ 厚木の都市空間に関するデータ収集と都市居住モデルの提案

⑸ 防災と災害復旧を想定した市民ネットワークの構築

 上記の⑴、⑵が「研究分野」で述べた「建築史・都市史分野」、⑶、⑷、⑸が「建築計画・都市計画分野」の取り組みとなる。両者を統合することにより、厚木市の過去から現在までの総合的なデータベースが構築される。

 

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